新しい生活様式での学校教育の未来像の構築

投稿日:2020年7月4日

今日は,スクールカウンセラーとして小学校を訪問していました。面接のない時間には、授業中の教室や廊下を見回っています。

1年生の教室の前に行き、教室を覗くと、児童たちがそれぞれジーッと自分の手を見ています。皆さんは、どのような授業を想像しますか?

私も「何だろう?」と様子を見ていました。

静かに語りかける担任の先生の静かな声が聞こえてきます。
「赤ちゃんの頃はもっともっと小さく可愛い手かだったね。」

「だんだん大きくなって、力もついて来ました。」

「その手で、荷物を運んだり、給食を食べたり、お掃除もします」

「でも、その手で、他人(ひと)をたたいたり、物を壊したり、落書きをしたりするのは、残念ですね。」

どうも教室でトラブルがあったみたいです。詳しい事情は分かりませんでしたが、神妙に自分の手を見ている子どもたちの姿を見て、担任の先生が子供たちに伝えたかった真意は、きちんと伝わっているなと感じました。」

カウンセラーとして学校を訪問していると、このような場間には何度も遭遇します。

この日、5年生の教室では。ゲームを通して、担任教師と子供たちが勝負をします。取ったカードの枚数を競います。結果は、どうも教師の負けのようです。しかし、最後のカード数をカウントするときに教師がズルをして(バレバレですが)、強引に教師の勝ちと宣言します。当然、子どもたちからはブーイング。しかし、力づくで教師は勝利を主張します。笑いの中で、子供たちは、ルールを守ることの意味を学びます。

学校教育には、このようなプロの教師のテクニックが満載です。

コロナ禍となって、3か月間の学校休業が続きました。6月からの学校再開で、徐々に日常性を散り戻しつつありますが、今回のことで、学校現場でもリモート授業の必要性などを強く意識しています。

その為、学校の設備を整えることや教材ソフトウェアの開発、受信者側である各家庭での環境整備等、システムの構築が急務となっています。そうなってくるとIT関連の人々が、システム構築の主体者となってきます。

学校には長年にわたって培ってきた教育現場の文化(教師の授業力・指導力・共感力・洞察力・説得力等々)が、たくさんあります。かって、団塊の世代の大量退職時代に、そのような教育文化が後輩教師に継承されないで終わってしまうのではないかと危惧されました。

そして今、学校現場への新たなシステムの導入に伴って、同じく、先生方が培ってきたものが、システムの変化とともに切り落とされていくのではないかと心配しています。

今年の夏休みは、多くの地域で、短縮が予定されています。授業時数の確保からは,止むを得ない措置だと思います。しかし、中学校では一単位当たり50分の授業を、45分に短縮して、7時間目の授業を実施している所もあります。そして、単位時間ではなく,コマ数でカウントして充足させようと考えています。1日に7時間も授業をするのであれば、5分短縮は妥当な措置だとは思いますが、数字合わせの批は免れません。

そのような自治体の苦肉の策に現れるように、2か月の遅れを取り戻すことが至上命令となり、中身が論議されていないのではないかと思います。

同じように、オンラインで学校と家庭を結び付けさえできれば、解決ではないのです。オンラインだからできる授業もあるかも知れませんが、オンラインではできない指導、もしくは対面での方が効果的である授業もあるでしょう。便利なシステムでの功罪にも配慮する視点を失わないで欲しいのです。

これまでの教育遺産とも言うべき、各先生方が持ち合わせている様々な教育文化を継承・発展させながら、「新しい生活様式」における学校の在り方を各自が考え、学校教育が新様式の導入と共に衰退することのないよう、「新しい生活様式での学校教育の未来像の構築」の知恵が求められているのだと思います。

この記事へのコメント(0

まだ書き込みはありません

コメントを残す