毒とは、人間或いは生物にとって心身に害を及ぼす物質と考える。一方、薬とは「人間の健康状態を回復し,保持し,向上させるもの(食品薬学ハンドク)」である。
本来、両者は、人間にとって対極の価値を持つ存在であるが、害を及ぼす働きを持っている毒が、人に役立つ働きをするというのである。
変毒為薬と言う言葉は、仏典を注釈したインドの竜樹の「『大智度論』巻100に「大薬師の能く毒を以て薬と為すが如し」とあることに由来する」(教学用語探索)ものである。
難しい語源の解釈は置き、本来は毒と思って忌み嫌って避けていたものから、思わず薬の働きを得ることができたと言う意味で、私たちの人生の在り方への示唆を含んでいるのである。
私は、この変毒為薬と言う言葉が好きで、よく使っている。
例えば、こうだ。
転居をして、子どもの学校が遠くなった。毎朝、30分の距離を徒歩で通っている。朝が早くなって起こすのが大変。往復の時間がとられ、自由な時間が減った(毒)。しかし、小学校の6年間を歩き続けて基礎体力がついた(薬)。これを変毒為薬と言う。
元気だけが取り柄の長男が、体育の時間に友だちとぶつかって足首を骨折した。暫くは、車イス生活で、とても不自由になった。出来ないことが多くなって、我儘が出て来た(毒)。最初は、家族も心配して、優しく接していたが、次第に我儘になる彼を避けるようになった。長男も、自分の我儘ぶりに気付いて、それでも他者の助けを必要とすることから、人の優しさの大切を知ることになった。ケガが治ってからの彼には、今までに見られなかった、他者への気遣いが生まれていた(薬)。これを変毒為薬と言う。
私たちが生きていく上には、ケガや病気もある。失敗や、選択の間違いから、大きな負担や苦労が生まれることもある。予期せぬ出来事に翻弄される場合もあるかも知れない。
それを乗り越えるすべとして、「変毒為薬」という言葉は、力強い支えとなるかも知れない。
今、受験に苦しんでいる人、友だち関係で苦労している人、何かに行き詰って困っている人、今大変だと思っていることが、あなたの捉え方、考え方、向かう方向を見直すことで、毒を薬に変えることが可能となると思います。変毒為薬しましょう。
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