キラーストレスについて、NHKが2夜にわたって放送した。平成27年12月1日よりストレスチェク制度(50人以上を雇用する事業体で義務化)がスタートしたこともあり、メンタルヘルスに関する国民の関心が高まっている時期、反響は大きかった。
元来、ストレスは人類が狩猟生活を送っている環境の中で、猛獣に遭遇して、生命の危機に置かれた時の状況を意味していた。その危機から逃れるか敵と闘うのかの2者択一に迫られた時、どちらにしても素早く行動できるため、血圧を上昇させ、筋肉を緊張させ、状況に過敏に反応できる身体反応を起こすメカニズムができあがった。
つまり、ストレス反応は人類にとって不可欠の身体反応であると言える。猛獣が目の前にいなくなれば、ストレス反応は収まり、体も通常の状態に戻るのである。
一方、現代人は、生命の危機に及ぶようなストレスの場面はないかも知れないが、通勤、仕事、近所付き合い、家族、健康、経済、地域環境、人間関係、多忙等で、ストレスの切れ目がなく、身体反応が慢性的に続いているといった状況に置かれているのである。
番組では、間断ないストレスは、やがて人々の命をも脅かすキラーストレスとなると警告する。その為、蓄積するストレスの低減が急務の課題となるのである。
そのストレスの逓減法として取り上げられたのが、
- コーピング と
- マインドフルネス
である。
この2つについて、子どものストレス低減の立場から考えてみたい。
最初に、コーピングとは、「対処すること」といった意味をもち、ストレスへの対応、処理、抑制、対処といったことである。
一般的にも、ストレスの解消法として「3R」が知られている。Rest(休息)、
Recreation(余暇) そして Relax(緊張の緩和)であり、それらの活動や行動、態度がコーピングとなる。具体的には、横になる、一息つく、お茶を飲む、音楽を聞く、歌う、旅行、スポーツ、趣味、おしゃべり、マッサージ、ヨガ等、多岐にわたる。
子どもなら、どうか。昼寝、ゴロゴロ、テレビ、ゲーム、スマホ、おやつ、遊び、スポーツ観戦、遊園地、外食等、多く考えられる。
番組でも触れていたが、些細な事でも数多く見つけることが重要だ。ここでは、安近短な事柄、そしてすぐに切り替えが可能な事柄に絞って、考えてみる。
ゴロゴロ、飲み物を一杯、お菓子を少々、背伸びやあくび、ペットに触れる、場所を移す、音楽を1曲、マンガを一編、娯楽を5分、どうでしょう。このようなコーピングを予めリストアップしておく。それを、順番にやってみて、お気に入りベスト10でも作ってみてはいかが。子どもに試してみる価値はあり。
2つ目は、マインドフルネス。
日本マインドフルネス学会では
「“今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、 評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること” と定義する。なお、“観る”は、見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる、さらにそれらによって生じる心の働きをも観る、という意味である。」と述べている。
マインドフルネスは、仏教 の“瞑想”に起源をもっているが、アメリカからの逆輸入によって宗教性が排除され、認知療法と結びつくなど、新たな潮流を起こしている。
IT企業が社員のメンタルヘルスや能力開発のために、マインドフルネスを導入したことで、多くの企業、学校、役所、刑務所などでも実践されるようになり、注目を集めるようになった。
”今、ここに“の瞑想は、多忙な日常からの離脱となり、安穏な気持ちを引き起こす機縁となる。子どもたちにとっても、静寂な瞬間を体験することは意味がある。瞑想といわれるレベルでなくても、心身を動から静へ導くことの意義は大きい・
家庭や学校で、生活スタイルに“瞑想”の時間を設定し、習慣化する。その時間の心地よさを体験すれば、主体的に感情のセルフコントロールができるようになり、将来の人間関係の構築にも寄与できるようになるだろう。
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